母の最期の日々その５

看護師さんたちが帰った後、さすがに出かける勇気はなかったけど、家じゅうに掃除機をかけたりトイレ掃除もしました。

母はおとなしく落ち着いて、ただ空を見つめて手を上げ下げしていました。

お昼ごろからだったか、ふと気づくと、手の上げ下げをほとんどしなくなっていました。

あれ？と思い、母の側で手を握りながら様子を見ていたら、下顎呼吸していることに気づきました。

たぶん、30分くらい前から息をスーハーしていて顎が上下に動いていたのです。

最初のうちは何も思わず

何を語りかけてもスーハースーハー。目は天井の一点を見つめているだけ。

そしてハッと気づきました。これが下顎呼吸かと。

昨日、お医者さまに聞いた時は、体の大きな先生だったので、母の下顎呼吸とは違い動きが大きかったので、母が今それをしていることになかなか気づけなかったのです。

そうかそうかと、その後はずっと母の手を握り言葉をかけ続けました。

ここで、悔いを残すことなく、誰にも聞かれていないので恥ずかしげもなく、今まで言ったことがないようなセリフをたくさん言えました。

14時半ごろから呼吸が少しゆっくりになって来ました。いよいよだと確信してどんなしぐさも見逃すまいとただずっと母の手を握り、

お母さん　お母さん　ありがとう

と言い続けました。

じっと天井を凝視していた母の目が上下にくるくると動き出し、少し怖くなりました。

そして急にふっと目を閉じました。

本当に突然だったので私の心はぎゅっと押しつぶされそうになり

お母さん！！と思いましたがまだ息は続いています。

呼吸のペースもだいぶスローになってきて、足を触ってみると冷たく紫色に。

15時過ぎからさらに息が弱くなり、はあーっと長く息を吐いたり吸ったりしています。

15時13分息が弱く弱くなりもう終わりか？

それでも、小さく小さく息をしている。

15時19分もう息止まりそう。

１５時２２分息止まった？と思い首で脈をとろうとしたら『むにゃっ』と小さくつばを飲み込んだのでびっくりした。まだだった。

再度、もう止まった？と思い首を触ったらまた『むにゃ』っと小さく唾を飲み込む。

あ、また、まだやった・・・・

線香花火が燃え尽きるように

15時25分喉を触ったけどもう『むにゃ』っとはしませんでした。

ああ、完全に止まってしまった。

ありがとうありがとう。

お母さん　おつかれさま

最後に私の願いを叶えてくれて、命の尽きるまで見届けられて、母を父の元へ送り届けることが出来ました。

それでは今日もありがとうございましたm(__)m

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